「菓子より甘く」の翌日
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「ごめんください」
「はい」
「今日もお届けに上がりました」
「ああ。で、今日は?」
「粉ミルクです」
「はあ?」
「こちらでよろしいですか」
「ち、ちょっと待て。セオ、城の王子の分じゃないのか」
「私もそう思ったのですが、お届先がこちらになっておりまして」
「……いや、おかしいだろ。赤ん坊のいないこの家に粉ミルクなんて必要ない」
「私に申されましても……」
「戻ったぞ」
「おかえりなさいませ。いつもごひいきに」
「何だ、今日は」
「粉ミルクをお届けに上がりました」
「そうか。そこに置いてくれ」
「ち、ちょっと! 何で!」
「準備は早いに越したことはない」
「早過ぎる!」
「これはこれは。奥様がおめでたでしたか。ぜひともごあいさつしたいのですが」
「……」
「昨日済ませたのではないのか」
「え? と申されますと?」
「目の前にいるだろう」
「……え! これはたいへん失礼致しました。お背が高くお声もハスキーでいらっしゃるのでてっきり男性かと思っておりました」
「い、いや、お――」
「まだできていないが、仕込む準備はいつでもできている。昼間でも」
「な、な、何言って――」
「ほっほっ。これは気が利きませんで。それでは早々に失礼致しますので、サインを……」
「これでいいか」
「ありがとうございます。またよろしくお願いいたします」
「これ、邪魔」
「そう言うと思い、取り置いてもらっていたのだが」
「倉庫が溢れてるんだってさ」
「うーむ」
「セオドアにあげよう」
「セシルの妻は母乳で育てているらしい」
「じゃあ、返品」
「だめだ。いずれ必要になる消耗品だろう」
「消費期限があるんじゃあ……」
「だから、急ぐぞ」
「あっ……や……だめだって……」
「有言実行だ」
「ん……って、手術、済んでないだろ!」
09/08/21〜09/10/25