「で？」
「そういうことだ」
「で、それを俺に、着ろ、と」
「料理をするときの必需品だろう」
「男向けの地味なものもあるのに、なんで白のビラビラなんだよ」
「油が跳ねて火傷でもしたらどうする」
「火傷の心配するくらいなら、なんで裸なんだ」
「これに載っていた」
「……それ、どこから」
「エブラーナの王がくれた」
「あいつ……ちょっと見せて」
「私がもらったのだ！」
「ちょっとだよ！ ケチ！ おー、エブラーナ人かな。黒髪がエキゾチックでセクシーだ」
「なかなかそそるだろう。もう少し大きいほうがいいが」
「聞いてないから」
「私はこっちのほうがいい」
「でかっ。金髪碧眼か……わかりやすいなあ」
「そう照れるな」
「照れてない。あっ、もしかして同じやつ？」
「町に売っていなかったので、エブラーナから取り寄せたぞ」
「……その情熱を他のところで使えよ……」
「裸に一部の衣類を残した姿のほうが昂奮するのは男の性だ。殊にこれは、愛する者に料理を作るという健気な献身と、性行為を喚起させる裸体という、相反す――」
「はいはい、御託は結構」
「……」
「これは、この横から見えるか見えないかがいいんであって、胸のない俺が着てもどうってことない」
「とにかく着てみろ。裸で」
「嫌だ」
「文句は着てから言え」
「嫌だ。付き合いきれない」
「……仕方ない。自分で着――」
「ちょっと！ 何でそうなるんだよ！」
「存外似合うかもしれんぞ」
「げー、見たくない」
「ならば、着てみろ」
「……一瞬だけだからな！」
「……」
「だから言っただろ」
「なるほどな……」
「何、その薄い反応」
「筋肉と相性が悪いのか」
「このビラビラが、殺人的に似合わないんだよ！」
「こんな風に髪を巻くといい。どうすればいいのだ？」
「ひとの話を聞けよ！ それに、女物だから小さい」
「見えそうで見えない、がいいのに、しっかり見えているからな。下から」
「見るな！」
「よし、見慣れてきたぞ。なかなかいい」
「よくない。もう脱ぐ」
「おい。何か作らねば着た意味がないだろう」
「えー、面倒くさいなあ」
「皿洗いでもいいから、とにかく台所に立て」
「後ろから襲うつもりだろ」
「……わかっていても口にするものじゃない」
09/08/21〜09/10/25