「……」
「どうした」
「いや、好きだなあ、と思って」
「丈をおまえに合わせたぞ。フリルも少し抑えた」
「……それは?」
「セシルの妻に借りてきた」
「確か髪を巻く道具だったと――」
「案ずるな。やり方も教わった」
「……おつかれさま」
「こら、待て。どこへ行く」
「ちょっと用事が。あ、着てていいよ。代わりに」
「着るのは構わんが、見せる相手もいないのに一人で着るのは滑稽だろう」
「二人でも滑稽だ!」
「とにかくここに座れ。髪を巻いてやろう」
「嫌だ」
「文句はあとから聞いてやる」
「嫌だ」
「……」
「自分が巻けば? 器用だし、できるだろ」
「似合うと思うか」
「全然」
「……やってやろうではないか!」
「熱くなるところ、違う。ま、いいけど。じゃ」
「ただい……」
「待っていたのに、どこへ行く」
「い、いや、まだ用事が。というか、まさか本当にやるとは……あっ」
「ちゃんとこっちを見ろ」
「か、勘弁してください」
「なかなかだろう。ん?」
「す、素敵です。輝いてます。だから――」
「だからといって、襲うなよ」
「め、滅相もございません!」
「兄さっ……何やってんの」
「セ、セシル! こ、これは、その、俺が嫌がったから――」
「どうだ」
「……か、可愛い!」
「えええ!」
「だろう」
「キレイにできてるよ! カインがやったのか」
「こいつが嫌がるので、私が自分でやってみた。これで」
「ああ、ローザが貸したって言ってたやつ、これか。すごい。兄さん、やっぱり器用だ」
「セシル、これも存外似合うだろう。どうだ」
「銀の巻き毛もきれいだなあ。ということは、僕も似合うかもな」
「おい、これも――」
「今度式典のとき、兄さんにやってもらおうかな」
「これも……」
「……(さすがの弟も裸エプロンはスルーか)」
09/10/26〜10/06/20