拍手御礼

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25

「ちょっとした遊びをしないか」
「……」
「『主従ごっこ』だ」
「……」
「何だ、その目は。勘違いするな。おまえが主で私が従だ」
「……あのエプロン、着たいだけじゃないのか」
「何か誤解しているようだが、あれはおまえに着せるために買ったのだ」
「で、何? 命令して欲しいわけ?」
「おお、もう始まっていたのですね。ノリがよろしくて結構です」
「違う!」
「違うのか。えらく冷たい物言いをするものだから」
「そう聞こえた? 呆れてただけだ」
「とにかく、寝室に行こう」
「はあ? 遊びってそっち? こう、もっと『おかえりなさいませ。お食事にされますか』とかじゃなくて?」
「それは後でやる。高飛車にえらそうに、頼むぞ」
「ち、ちょっと! やるって言ってない!」
「往生際が悪い」
「……要するに、ベッドで主導権を取れってことか」
「端的に言えばそうなるか」
「何でそんなこと思いつくんだよ」
「これの『特集』に載っていた」
「またあいつか!」
「日頃かしずかれてばかりいる主君は、慣れない環境に新たな刺激を求めるものだ」
「……気持ちはわかるぞ、なんだ」
「ちなみに、奴は片恋なので、主従ごっこは妄想に留まっているらしい」
「そんな情報要らない。しかし、こんな雑誌、よく出てるなあ」
「背表紙を見てみろ」
「『編集発行人 ギルバート・フォン・ミューア』!」
「商才に長けているようだな」
「知らなかった……」
「セシルも毎月購読しているぞ」
「あ、他はまともだ。『褒めて伸ばす、叱って伸ばす』『パワハラ調査結果報告書』『連載小説:身分違いの恋』『特集:主従逆転の発想で快適性生活』……硬軟織り交ぜ過ぎじゃないか」
「早く来い」
「ちょっと待って。これ、読みたい」
「後にしろ」
「すぐ済むから」
「何か惹かれるものがあったのか」
「これ。『あの頃の自信が蘇る!』だって。試してみようか」
「……そういった類いはみな誇大広告だ。信用できん」
「ギルバートに問い合わせてみる」
「訊かんでいい!」







10/08/21〜10/10/20
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