拍手御礼
15
カインは一人でいることが多い。
皆から少し距離を取り、でも皆を見渡せるところで壁に寄りかかり腕を組み、ぽつんと立ったままでいる。前に尋ねたときは「賑やかなのは好きじゃないが、皆が楽しそうにしているのを眺めるのは好きだ」と言っていたから、あまり気にしなくていいのかもしれない。
竜の兜の下の表情はわからない。でも私はずっと、彼は瞑想しているのだと思っていた。
静かに目を閉じ精神を集中させ、私が耳を傾けるのは幻獣たちの声。彼が聴こうとしているものは何だろう。
私は心の中で幻獣たちに話し掛ける。彼も誰かに話し掛けているのかな?
「カイン」
「ん?」
「寝てたの?」
「いや」
彼が笑った。きれいな笑顔。きれいな唇。
「考えごと、してた?」
「いや」
カインは無口で、必要以外のことは喋らない。でもローザに聞いて、知っている。彼が時折放つ冗談はとてもおもしろいんだって。何を話せば、言ってくれるんだろう。
「瞑想していたんでしょ?」
「……まあな」
ほら、やっぱり。
私はうれしくなって、にっこり微笑んだ。
「何か聴こえた? 幻獣の声?」
「……いや。何も聞こえないよ。何も」
彼の声の調子が少し落ちた。私にもわかる。何も聞こえないときは寂しくて悲しくて、幻獣たちの気配を探しておろおろしてしまう。カインも同じなのかな。いつも落ち着いて見えるけど。
「ねえ」
「ん?」
「誰かに出会った? 心の中で会える?」
私が、流れ着いた世界で幻獣王さまたちに出会ったように。心の中で彼らに会えるように。
彼は顎に手を当て首を少し傾げた。きれいな手。きれいな指。
「……かもしれない。でも忘れた」
「……そう。また会えるといいね」
忘れているのにか、とカインは少し笑った。私も笑って頷いた。
心の中で会えるのは特別な人。私の知らないその人に、私の知らない飛び切りの笑顔を向けるのかな。それが羨ましくて少し憎らしくて彼の二の腕に手をかけぎゅっと握ると、彼は困ったように笑った。