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09

もしゴルベーザがカインを連れて月に旅立っていたなら……







フ「カプセルは一人用じゃ」
ゴ「ダブルサイズに作り直します」
フ「そんな職人はおらんぞ」
ゴ「青き星から連れて来ます」
カ「……(言うと思った)」




シ「おまえさん、強引過ぎるぞ。死ぬかと思ったわい」
ゴ「早速だが、これを二人用に改造してくれ。できるな」
シ「……このためだけに、わしをはるばる……」
カ「すまない、シド」
シ「愛されとるな、カイン。よし、見てろ。立派なのを作ってやるぞい」




カ「なんか、これだけ他と違うような……」
ゴ「彼の趣味なのだろう」
カ「さすが、センスが古いというか」
フ「できたそうじゃな。どれ……何故回る必要があるんじゃ」




カ「夢は見るのでしょうか」
ゴ「もう主従ではないのだ。堅苦しいのはやめろ」
カ「そうはいっても、急にはなかなか……」
ゴ「これはどうだ。敬語を使うたび、罰ゲームだ。例えば……」
カ「……そんな罰なら、わざと使いそうです」
ゴ「可愛らしいことを言うじゃないか」
シ「あの……わし、帰っていいかな」




フ「永き眠りにつくんじゃぞ」
ゴ「わかっています」
フ「ややこしいことをするための眠りじゃないぞ」
ゴ「『ややこしいこと』とは何ですか」
フ「年寄りに言わせるのか」




ゴ「お願いがあります」
フ「何じゃ」
ゴ「私たちのカプセルだけ規格外なので、部屋の端に置かせてください」
フ「完全防音じゃから心配せんともよいぞ」




フ「おぬしはこの薬を飲みなさい。我々と同じように眠れる」
カ「同じように?」
フ「余程のことが無い限り目を覚まさない眠りじゃ」
ゴ「……(口にするのも憚られるアレを試してみるか)」
フ「彼が眠ってから薬を飲むんじゃぞ」




カ「空腹や尿意は感じないのですか」
フ「それが月の民の不思議じゃ」
ゴ「性欲は感じないのですか」
フ「おぬしはちょっと黙っとれ」




カ「『余程のこと』とはどういうことでしょうか」
フ「我々の命が脅かされるようなことじゃ」
ゴ「やたら『死ぬ、死にそう』と言うなよ。皆が目覚めてしまう」
カ「……(赤面)」
フ「おぬしら、帰るか? 青き星に」




カ「いつ目覚めるのですか」
フ「それはわからん。それでもいいか」
カ「はい。彼と一緒にいられるなら」
ゴ「同じ枕で同じ夢を見ような(ぎゅっ)」
フ「帰った方がいいよ。ほんと」









08/10/21〜08/12/20
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