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01

 ドアの閉じる音で目を覚まし、我に返る 
 主が部屋を出て行くとき、いつも眠っているのが恨めしい

 どんなにこらえても、瞼が重くなり、まどろみに抗えない
 それはおまえが術中にあるからだ、とルビカンテは言っていた
  
 それならそれでかまわないけれど

 一人寝には広すぎるベッド、皺の寄ったシーツ
 シーツには一人分のぬくもりだけ
 
 隣に広く空いた場所に頬を寄せてみる
 黒い金属の粉が点々と散らばっているのがよく見えた

 指先で粉を集めながら、膝を抱え寄せ丸くなる
 小さな小さな粉の山を、ふうと一息で吹き飛ばした

 それならそれでかまわない、それでもかまわない

 頬に伝わる布の温度は冷たいままだったけれど
 まだ熱の残る身体のどこよりも、胸が熱く苦しかった







 ごく緩く拳を握り、両の手首の内側を上に向けた寝姿は
 腹を見せて恭順を装う動物のようだ
 何もかも預けて眠るその姿は歳よりも幼く見える

 拳の中に指を差し入れてみる
 反射的に握り返してきたので、慌てて引き抜く

 緩く開かれた形のよい唇にそっと触れてみる
 ん、と微かな声を上げて身じろいだので、指を離した

 すうすうと規則的な寝息

 結ばれた口がきゅっと上がり、微かな笑みをたたえる
 しあわせな夢を見ているのだろうか

 しあわせならばそれでいい
 おまえがしあわせならばそれでいい









08/03/29〜08/05/06
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